
簿記を使った職業はAIに代替されてしまうのかな?

AI時代でも役立つ簿記スキルが知りたい!
なんてお考えではないですか?
AIに代替される職業として経理事務や公認会計士など簿記にまつわる職業が挙げられる事もしばしばあります。
事実、筆者自身が従事する経理・財務では入力業務など単純作業はRPAやAI-OCRと言ったテクノロジーによって代替されつつあります。
この記事を読んでもらえるとAIに代替される職業やAI時代でも役立つ簿記スキルについて理解してもらう事が出来ますよ!
そもそもAIとは?
AI(人工知能)とは、多量にあるデータ[1]ビックデータから法則性を見つけ出す事で、ある条件下における最適解を導き出す事を得意としています。
それを可能とするのが機械学習と深層学習(ディープラーニング)です。
機械学習は、ビックデータからどの要素が結果に影響を与えているのかを人が判断し学習させる事で、解答の精度を上げる事を可能にしています。
ディープラーニングは、機械学習を深化させ、ニューラルネットワーク[2]人の脳にある神経細胞ニューロンの特徴を模して人工的に表現したものを用いて人間の思考に似た働きをさせる事で人の手を介さずにデータ分析・推論を行い自動で学習する事を可能にしました。
ディープラーニングの発想自体は1957年には研究が始まっていましたが、コンピュータの演算力不足や脳の構造が解明されていないなどの要因で長らく冬の時代が続く事になりますが、研究は続けられ、近年に入りコンピュータの演算能力が向上した事、脳科学が発展した事、インターネットやスマートフォンの普及により学習に必要なビックデータが十分に得られるようになった事などにより2012年の画像認識率を競う大会でディープラーニングを用いた手法によって、これまでの大会記録を塗り替えた事で注目を集めました。
以後、AI研究ではディープラーニングを用いる事が一般的となりました。
2016年にはGoogle傘下のDeepMind社が開発した囲碁AIプログラムAlphaGoが当時、囲碁の世界チャンピオンであったイ・セドル棋士から勝利を収めた事でAI技術の発展が世間一般にも知れ渡る一大ニュースになりました。
なお、現在イ・セドル棋士は現役を引退しています。棋力では、囲碁AIに敵わない事が引退する一因にもなっていると報じられました。
また、囲碁AIは、2,000年の歴史で築き上げられた定石[3]先人が編み出した最善と言われる囲碁の決まり手すら刷新しています。
このように、AIは大規模情報処理や将来予測によって予め答えの用意された事象について最適解を出す事においては人間を圧倒しています。
AI時代に簿記は必要ない?
簿記とは、複式簿記など一定のルールの下に企業などの経済活動を記録する事で貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を作成する事で、事業価値や経済活動の成果を定量的に表現する事を可能にします。
AIは、法則性のあるものを最適な方法で処理する事に長けていますから、単純に簿記を用いて経済活動を記録し財務諸表を作成する行為を代替する可能性は大いにあります。
2015年12月に発表された株式会社野村総合研究所 日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に ~ 601 種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算 ~を元にAI時代の簿記について見ていきましょう。
将来AIに代替される可能性の高い業種
事務員や公認会計士など簿記と密接に関わる職業や受付・窓口係や警備員など、生産性のない人でなくとも代替可能な職業や測量士など定量的な物事を数値化して扱う職業などがAIによる代替の可能性が高いとされています。
将来AIに代替される可能性の低い業種
エコノミスト、経営コンサルタント、中小企業診断士は定量的な数値化された事象について、その事象を取り巻く個別具体的な要件を加味した上で、事業の方針決定など重要な判断を下すアドバイスを与える職業、ゲームクリエイターと言った無から有を生み出す創造的な職業、保育士と言った対人を前提とした情操教育やコミュニケーションを前提とした職業など定性的な職業はAIに代替される可能性は低いとされています。
このような研究結果から、物事を数値化するだけの定量的な職業、生産性やコスト面から人でなくても良い職業はAIに代替される可能性が高い事が分かります。
また、数値化する事の出来ない定性的な職業、クリエイティビティや情操教育、コミュニケーションなど人間性に由来する職業はAIの代替可能性は低い事が分かります。
AI時代でも役立つ簿記スキルとは?
野村総研の研究では、2030年に到来が予想されるAIと共存する時代に定量的な物事を最適な方法で処理する事が得意なAIが活躍する時代でも役立つ簿記スキルをご紹介します。
- 財務諸表の読解力が身に付く
- 経済活動の意思決定に関わる判断材料の提供
- コスト管理する事で利益貢献度が分かる
- 提案業務を行う事が出来る
財務諸表が読み解けるようになると、数値から経営状態を把握する事が可能になります。経営状態を把握する事で、マーケットを取り巻く様々な要素を加味した経営への助言・将来予測や数値の意味合いを解説するといったコンサルティングのような定性的な業務を担う事が出来るようになります。
また、収支や損益を把握する事でコスト管理が出来るようになり自身の利益貢献度が分かるようになります。
例えば、売上を100千円上げるために費用が70千円かかるとした場合に売上100千円に対する利益は30千円という事になります。売上のみに着目した場合には、200千円の売上を上げれば費用は140千円かかり残る利益は60千円ですが、利益に着目した場合は、同じ売上100千円であっても費用を50千円に抑える事が出来れば残る利益は50千円さらに売上を200千円に伸ばせれば費用は100千円で残る利益は100千円と同じ売上であっても利益を意識し掛かる経費をコントロールする事でより多くの利益をもたらす事が可能になります。
また、経済活動における自身のポジションが把握出来るため、クライアントにどのような取組を行えばより利益が獲得出来るのかといった提案をする事も出来ます。
まとめ
- AIは定量的な物事の大規模な情報処理や将来予測が得意
- AIは定性的な具体的な数値で表されない物事は苦手
- 事務員など定量的な業務に従事する人や受付など人でなくても良い職業はAIの代替可能性が高い
- 経営コンサルタントや保育士、クリエーターなど定性的な職業や情操教育、クリエイティビティなど人間性に由来する職業はAIの代替可能性が低い
- 簿記スキルを活用した解説・提案など定性的な業務はAI時代でも役立つ
最後までお読み頂きありがとうございます。
当記事が読者方のお役に立てたら幸いです。
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