
法人では、どんな節税対策が出来るんだろう?

タックスヘイブンを活用して節税スキームの効果を最大化したい!
なんてお考えではないですか?
法人で課税されるのは法人税です。個人事業主の際は所得税が課税されていましたが税率や課税の仕組みも異なります。
節税対策を考える上でも税金の課税の仕組みを理解する事で、節税対策による効果が自身の望むものであるのかという判断をする事も可能になります。
この記事を読んでもらえると法人の税金の仕組みや節税対策について理解してもらう事が出来ますよ!
法人の税金の仕組み
法人税
- 課税所得[1]正確な税額算出には税務的な加算と減算が必要です=収入-必要経費
- 法人税額=課税所得×法人税率
株式会社や合同会社などの営利法人に限らず、協同組合、社団・財団という公益性の高い事業を営む場合も収益事業を行った際は課税されます。また、社会福祉法人や宗教法人などについて原則法人税は非課税ですが、収益事業を行う場合は課税対象になります。
法人の形態により税率は異なりますが、ここでは株式会社や合同会社など営利を目的とする際に設立される法人について税率を例示します。
開始事業年度 | |||
区分 | 2019年4月1日以後 | ||
資本金1億円以下の法人 | 年800万円以下の部分 | 15% | |
普通法人 | 年800万円超の部分 | 23.20% | |
上記以外の法人 | 23.20% |
例えば、課税所得を1,000万円とした場合の法人税額は、800万円の部分まで税率15%なので対する税額は120万円と800万円を超える部分に掛かる税率23.20%に対する税額46.4万円を合わせて166.4万円となります。
法人住民税
- 法人住民税額=均等割+所得割(課税所得×税率)
所得に関係なく納付する均等割と所得に対して課税される所得割があります。
均等割額や所得割の税率は会社規模や各自治体によって様々です。ここでは、仙台市を例に見ていきましょう。
法人の区分 | 均等割額 |
資本金等の額が1千万円以下かつ従業者数が50人以下のもの | 50,000円 |
資本金等の額が1千万円以下かつ従業者数が50人超のもの | 120,000円 |
資本金等の額が1千万円を超え1億円以下かつ従業者数が50人以下のもの | 130,000円 |
資本金等の額が1千万円を超え1億円以下かつ従業者数が50人超のもの | 150,000円 |
法人の区分 | 所得割税率 |
1.超過税率 以下のいずれかに該当する法人
| 8.4% |
上記1以外の法人 | 6.0% |
例えば資本金が1,000万円以下で従業員が50人以下の法人で法人税が100万円だった場合の法人住民税の納付額は、均等割が5万円と所得割が6万円の合わせて11万円となります。
法人事業税
- 法人事業税額=所得割(所得×税率)+特別法人事業税(所得割×税率)
法人の所在地のある都道府県が課税しています。所得に対して課税されるため事業損失(赤字)の場合は納付税額が生じる事はありません。
また、法人税等と異なり、納付額が経費に計上する事が出来ます。
税率は法人の形態や規模により異なりますが、ここでは、株式会社など普通法人を例に見ていきましょう。
法人の規模によって適用する税率が異なります。
法人の区分 | 適用する税率 |
次のいずれかに該当する法人
| Aの税率 (超過税率) |
上記以外の法人 | Bの税率 (標準税率) |
上記の法人の区分に応じてAもしくはBの税率により税額を計算します。
法人・税率区分 | 税目 | A税率 (Bの税率) | |
普通法人 | 所得のうち年400万円以下の金額の | 所得割 | 3.75% (3.5%) |
所得のうち年400万円を超え年800万円以下の金額の | 5.665% (5.3%) | ||
所得のうち年800万円を超える金額及び清算所得の | 7.48% (7.0%) | ||
3以上の都道府県に事務所等のある,資本金の額又は出資金の額が1,000万円以上の法人は,上記にかかわらず所得及び清算所得の | 7.48% (7.0%) | ||
上記Bの税率(標準税率)で計算した所得割額の | 特別法人事業税 | 37.0% |
例えばBの税率が適用される法人で所得金額が1,000万円、事業所所在地が宮城県のみの場合の法人事業税額は、所得割が49.2万円、特別法人事業税が18.2万円の合わせて67.4万円です。
消費税
- 消費税額=収入と共に預かった消費税額-支出と共に支払った消費税額
国内で消費されるあらゆる財やサービスに対して課税されます。
法人税等と違い納税義務者と担税者が異なる事も特徴のひとつで納税義務者は、売上が1,000万円以上の事業者で担税者は最終消費者です。
事業者の納税額と最終消費者の担税額を図にしてみましたので確認してみてください。
このように事業者の納める消費税額は、預かった消費税から支払った消費税を差引きして算出されますが事業者が売上1,000万円未満で納税義務がない場合は納税するはずの税額は、そのまま事業資金として事業者の手元に残ります。
また、消費税は国内消費にのみ課税されますので、輸出など国外への消費へは課税されません。そのため、売上のほとんどが輸出などで売上に消費税が課税されない場合は預かった消費税から引ききれない支払った消費税分が還付されます。
消費税は預り金としての性質があるため事業者が赤字であっても納付税額が出る事また、所得の低い人ほど税負担が重たくなる逆累進性があるため悪魔の税制などとも言われています。
償却資産税
会社で所有する構造物や備品、機械装置などについて年に1回事業所の所在する市区町村に申告する事で課税されます。
対象となる資産は、自動車や家屋など償却資産税とは別に自動車税や固定資産税が課税されていない資産で例えば、建設用重機や給排水管、外構工事などです。
法人税の確定申告とは別に、市区町村に対して償却資産の申告になりますので注意しましょう。
法人の節税対策
キャッシュの支出を伴わない節税
役員用社宅
社長や役員が居住するためにマンション等を借りる場合、会社名義で借りたものを役員等へ貸し付けし家賃補助を行う事で、本来であれば役員自身が負担する家賃を会社側で経費計上する事を可能とし、また役員の家賃負担を減らす事が出来ます。
しかし、全額会社負担や賃料よりも極端に役員負担が少ない場合は、役員に現物給与の支給として課税されてしまうので注意しましょう。さらに役員には役員報酬で定めた以外の給与支給は認められていませんので、もし税務調査の際に家賃負担の現物給与とみなされてしまうと経費にすら計上出来ないので注意しましょう。
会社が負担出来る役員用社宅家賃の限度額は煩雑な計算を必要としますが、50%程度としていれば問題になる事は少ないです。
例えば、家賃月額20万円のマンションを社宅とした場合は、給与明細上で10万円を役員が負担しているようにする事で10万円(賃料の50%)を会社の経費とする事が出来ます。
旅費規程
役員や従業員が国内出張を行う際に距離や移動に使う交通手段をあらかじめ規定しておく事で、日当や交通費、宿泊費といった費用を全額会社の経費とする事が出来ます。
さらに、日当については、所得税が非課税のため、受け取る役員や従業員に税負担が生じる事もありません。
旅費規程はひな形がインターネット上でも見つける事が出来ますのでこちらなどを参考にして簡単に作る事が出来ますよ
定款の目的にコンサルティング業を追加する
接待を伴う飲食や出張が多い場合は、定款の目的にコンサルティング業を営む事を明示しておく事で必要経費としての説得力を強める事が出来ます。
例えば、個人的な旅行の性質が強い出張だったとしてもコンサルティング業としての視察という事であれば、業務上の必要経費と主張する事が可能になります。
接待交際費と会議費
資本金1億円以下の中小企業では、年間に必要経費として処理できる接待交際費の上限が800万円までと税法上決められています。つまり、たとえ業務遂行上、必要な接待費であったとしても年間800万円を超える部分は経費として認められないという事です。
しかし、1人あたり5,000以下の飲食代は会議費で処理する事が出来ますので、接待が多い業種の場合は、どんな飲食代も接待交際費で経理するのではなく、1人あたり5,000円以下の場合は会議費で経理する事で、取りこぼしなく経費を計上する事が出来ます。
未払金・未払費用の計上
青色申告を行う場合は、発生主義により経理を行う事になります。
発生主義とは、売上や支払に関してその債権債務が確定した時点で収益・費用を認識する経理方法です。
例えばクレジットカードの支払額が口座から引き落とされる場合の引き落とし額は、月の区別によらず一定期間で区切って請求されて来ています。
その一定期間を5月引き落とし分は、3月16日から4月15日としましょう。
会社の決算期が3月31日だったとすると、支払は5月ですが、3月16日から31日の利用分は当期に債務が確定していますので、当期の必要経費として計上する事が可能になるのです。
このように、たとえ支払が決算後であってもクレジットカードのように利用日から支払日までが決算期をまたいでいるものや月末締の翌月払いになっている場合は、決算期までの請求分は経費計上出来ますので、漏れなく経費処理するようにしましょう。
回収不能の売掛金など不良債権の貸倒処理
売掛金などの債券が回収不能になった場合は、全額を貸倒損失として経費計上する事が可能です。
回収不能の判断は、債務者が倒産した場合や弁済が滞って1年以上経過していたり督促しても一向に支払がない場合です。
建設業や卸業など取引先が多岐に渡る場合は、いつまでも売掛管理帳に載ったままでいる売掛金などが往々にしてありますので、売掛管理帳を点検する機会があった際は、貸倒の可能性がないか確認してみる事をおすすめします。
会計処理は税抜経理で行う
税抜経理とは取引を仕訳する際に本体価格と消費税とに区分して経理する事です。
こうする事で、少額減価償却資産の対象となる単価30万円未満の資産を判定する際に税抜きの本体価格で行いますので、税込経理よりも有利に経費計上出来ます。
例えば、単価327,800円(税込)のサーバーを購入した際に税込経理の場合は、単価30万円以上なので少額減価償却資産の特例は使えませんが、税抜経理により処理していれば本体価格は298,000円(税抜)となりますので全額買った年度で経費計上する事が出来ます。
社用車を導入する際は4年落ちの中古車を検討する
4年落ちの中古車を購入するとなぜ節税になるのかというと、減価償却費の計算方法にからくりが隠されています。
減価償却費とは、自動車などを購入した際に購入額を一括で経費計上せずに購入価格を法定耐用年数[2]通常使用すると見込まれる年数を法的に定めたもので除して各年に分割して経費計上する事です。
例えば、自動車の耐用年数は6年ですので300万円の新車を購入した場合は年間50万円ずつ経費計上するという事です。
しかし、中古資産を購入した際の耐用年数は、法定耐用年数から経過年数を差引きさらに経過年数の20%を足したものになります。
具体的には、自動車を例にすると6年(法定耐用年数)-4年(経過年数)+(0.8(4×0.2))=2.8年(中古自動車の耐用年数)となります。
また、1年未満の端数は切り捨てますので、4年落ちの中古自動車の耐用年数は2年という事です。
減価償却方法には定額法と定率法の2通りありますが、定額法は毎年均等に経費計上する方法で定率法は規定の償却率により減価償却費を計上する事で、定額法よりも早期に経費計上する事が可能です。
さらに、法人の場合の減価償却方法は特別に選択しない限り定率法を用いています。
そして、定率法で耐用年数2年の償却率は100%となりますので、購入した年度で全額経費計上する事が可能になります。
社用車を購入する際はカーナビなどは後から取り付ける
自動車に搭載されたカーナビが購入当初から本体と一体となっている場合は、自動車と同様に減価償却して経費計上する必要がありますが、自動車の購入後に本体とは別に取り付けた場合は、カーナビの購入費を購入した年度に全額経費計上する事が出来ます。
これは、減価償却資産を考える場合に、通常一体として機能するものか否かという点により資産を一体なのか区分できるかを判断するためです。
例えば、自動車に内蔵型のカーナビであれば、カーナビだけ取り外して独立して機能するものではないので自動車と一体であるという判断になります。しかし、後付けであれば、カーナビ単体でどの自動車に取り付けても機能しますので、別個の資産と捉える事が可能になるのです。
タイヤはどうなのか?と疑問を持たれる方もいると思いますが、通常、自動車はタイヤがなければ自動車として機能しないため自動車とタイヤは一体として考えられます。
このように、単体で機能する資産について即時償却する事で資産の本体価格を減らす事が出来ますので、償却資産税についても節税する事が可能です。
税制優遇制度を活用する
青色申告をする中小企業の場合は特例が用意されています。
様々な税制優遇制度が存在し、併用する事も可能ですので自社で適用可能な税制を一度検討してみましょう。
ここでは代表的なものをご紹介します。
・中小企業経営強化税制
適用対象法人が一定以上の設備投資を行った際に、投資額の即時償却[3]全額を投資した年度で経費計上または、税額控除[4]通常計算された法人税から直接控除する事が出来ますを受ける事が出来る制度です。
投資額を即時償却するか税額控除を受けるかは事業者が選択する事が出来ます。
節税額のみを見た場合は、税額控除の方が、通常の減価償却分有利ですが、資金回収スピードでは、減価償却の場合は耐用年数に渡って経費計上されるため、断然即時償却が有利になります。
また、即時償却を使って当期損失ないし利益を圧縮する事で、法人税等の繰戻還付や予定納税額を還付させられる可能性もあります。
税制優遇を受ける際は、税額控除と即時償却のどちらが自社にとって有利なのか適宜マクロな視点から検討する事をおすすめします。
・雇用促進税制
適用対象法人が2人以上の正社員を雇用した場合に税額控除が受けられる制度です。
地方企業が雇用する場合の「拡充型」と東京23区から地方へ本部機能や研究施設を移転する「移転型」の2種類があります。
拡充型を例にすると税額控除額は、雇用者1人あたり50万円です。さらに雇用者が8%以上増加するなどの上乗せ要件を満たすと1人あたり110万円まで税額控除を受ける事が出来ます。
・所得拡大税制
適用対象法人が給与等の引き上げを行った場合に税額控除が受けられる制度です。
給与引き上げや雇用者の増加などで給与支払額が前事業年度より増加した場合に増加額の15%を税額控除する事が出来ます。さらに継続して雇用している従業員の給与引き上げや教育訓練を受けさせるなどの上乗せ要件を満たすと控除額が25%まで引きあがります。
また、雇用促進税制との併用も可能です。併用する場合は、二重控除を避けるため増加した雇用者の給与分は所得拡大税制の控除額を算出する基準になる給与増加額から控除する調整計算が必要になるので注意しましょう。
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