
新型コロナウイルスの感染拡大で労働環境はどんな影響を受けているのだろう?

新型コロナウイルスに対応するための助成金や社会保障制度が知りたい!
なんてお考えではないですか?
日本においては、自粛要請が緩和されつつありますが、世界的には感染拡大は収束されたと言える状況には未だ至っておらず労働環境にも深刻な影響を与えています。
また、社会保障制度も要件緩和や新型コロナウイルスの感染拡大への緊急対応により創設されていますので、自分自身が対象になるのか、また勤め先で使える制度はどれなのか分かりづらいのが現状です。
この記事を読んでもらえると新型コロナウイルスの現況や労働環境への影響また、休業や失業の際に使える社会保障制度について理解してもらう事が出来ますよ!
新型コロナ国別感染者数の推移
世界的なパンデミックとなり現在も猛威を振るい続ける新型コロナウイルスについて世界的な感染者数の推移から収束状況を確認していきたいと思います。
世界的には、未だに感染者の増加傾向を見せる国もあり、アメリカ・ブラジル・ロシアは感染拡大が顕著です。日本においては、2020年6月19日に全国的な自粛要請の解除を予定していますが、カラオケ店や飲食店などがクラスターとなるケースもある事や新型コロナウイルスに対する治療薬やワクチンも開発段階にあるなど根本的な解決には至っていないため依然として収束する状況にはないことが伺えます。
新型コロナによる国内の労働環境への影響
新型コロナウイルスにより、不要不急の外出を控えるように政府からの要請があった事や多くの事業者が営業中止を余儀なくされるなど経済の停滞する状況が続いています。
そのような状況下で止むを得ず事業の休止などに伴い従業員を解雇するケースも出てきています。
ここでは、過去10年の失業者数の推移から新型コロナウイルスが労働環境へ与えた影響を見ていきましょう。
日本国内の完全失業者数
完全失業者とは、労働人口の内、仕事を失ってはいるものの求職活動している人の事です。そのため失業していても仕事を探していない人は含まれません。
2010年はリーマンショック[1]2008年9月15日に米大手投資銀行リーマン・ブラザーズHDの経営破綻に端を発する世界的な不況の余波を受けて失業者数は500万人を超えており最悪の就業状況にあった事が如実に表れています。
その後、失業者数は減少傾向にあり近年は200万人を切るまでに回復しており労働環境は改善傾向にあった事が見て取れます。2013年から始まったアベノミクスが奏功していたと言えます。
しかし、2020年に入り新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で2月20日に大勢の人が集まるイベント等への自粛要請が政府より発表されて以来、失業者数は増加傾向にあり2020年4月には200万人に達する程に労働環境は悪化しています。
日本国内の完全失業率
完全失業率は以下の算式により求める事が出来ます。
完全失業者数と同様にリーマンショックによる最悪の事態からは脱して近年では1991年のバブル崩壊後で最も低い水準に保たれており就業環境は良好であったと見れます。
しかし、新型コロナウイルスによる自粛要請が続く中、景気の減速に伴い完全失業率も増加しています。
出所:総務省統計局 労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)4月分結果
新型コロナによる労働環境への影響の国際比較
中国武漢に端を発し2020年3月11日にはWHOにより世界的なパンデミックに至った事が公表されました。その後も感染拡大が続く状況において、新型コロナウイルスが世界の労働環境へ与える影響について見ていきましょう。
近年、世界的な失業者数は減少傾向にあった事が分かります。しかし、2020年に入り新型コロナウイルスの世界的な感染が見られる中で世界的に失業者数が増加しておりアメリカにおいては、2020年の4月時点で完全失業者数が平時の2倍にも上る2,000万人を超えており最悪の労働環境に陥っています。
日本の労働力人口は2020年4月時点で6,817万人なのでいかにアメリカの完全失業者数が多いかが分かります。
一方、イタリアでは完全失業率が低下し労働環境が改善されているように見えますが、その実は、求職そのものをあきらめてしまい労働環境からドロップアウトしたために完全失業者に含まれない非労働力人口が増加しているためです。
ニッセイ基礎研究所 ユーロ圏失業率(2020年4月)-イタリアで失業率が大幅低下?
世界の完全失業率の推移を見てみましょう。新型コロナウイルスのパンデミック以前よりスペインは14%、イタリアでは10%さらにフランスでも8%台と元々高水準であった国も増加傾向にあります。イタリアでは、労働市場からドロップアウトしてしまい非労働力人口が増えたため完全失業率が低下しています。
アメリカの完全失業率の上昇が顕著で14%を超えています。例えば、アメリカの完全失業率を日本にあてはめると日本の労働力人口は6,817万人なので、その14%となると954万人が完全失業の状態にあると言う事です。
このアメリカの状況についてトランプ大統領は、名誉の印であるとしており、他のどの国よりもPCR検査を実施しているからとしています。
事実ロサンゼルスでは、無料で無症状者も含め全住民400万人に対してPCR検査を実施しています。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響
新型コロナ対応給付金一覧
従業員が申請するもの
傷病手当金
社会保険に加入している方を対象に新型コロナウイルスに感染もしくは発熱など感染の疑いがあるなどの諸条件を満たす場合に支給されます。
従前は傷病手当金は社会保険加入者の方のみを対象としていましたが、新型コロナウイルス感染拡大による影響を背景として特例で自治体によっては国民健康保険加入者であっても傷病手当金の支給対象となりました。
受給要件
- 業務外の病気やケガにより療養中
- 療養のため労務不能であること
- 4日以上仕事を休んでいること
- 給与の支払が無いこと
補償内容
- 直近12ヵ月の標準報酬日額[3]給料の平均額を日割りした金額×2/3
- 3日間連続して休んだ4日目以降が支給対象
- 受給期間は最長1年6カ月
厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)
労災保険給付
労災保険[4] … Continue readingの加入者を対象に業務に起因して新型コロナウイルスに感染した場合は、給付金の支給対象になります。
通勤時の傷病も補償対象ですが、通常必要な通勤過程のみが対象になります。
例えば、通常生活に必要な食材等を通勤時にコンビニやスーパーで買い物をした後に通勤経路に復帰した場合は、補償対象になると考えられますが、帰りにカラオケなど遊興施設等に立ち寄った後に帰路にて事故等により傷病を負った場合は労働保険給付の対象外になりますので注意しましょう。
受給要件
- 業務上もしくは通勤時において心身に傷害を負った場合
- 傷害により労働不能となり復帰までに療養や休業を要する場合
補償内容
- 療養費の全額
- 休業中の給与補填
- 障害が残った場合の障害補償
- 死亡した場合の遺族補償
- 葬祭を行う際の葬祭料補填
- 療養開始から1年6ヶ月経過した後も傷病が治らない場合に一時金
- 重度の障害・傷病により介護を必要としている場合の介護費用
- 健康診断の際に脳・心疾患に関する一定項目の全てが異常と診断された際の2次健康診断料
失業手当
雇用保険の加入者を対象として、退職して職を失った場合に給付金が受けられます。
補償内容については、勤続年数や年齢のほか退職理由について自己都合と会社都合では扱いが異なりますので詳しく見ていきましょう。
受給要件
- 雇用保険の加入者で離職日から遡って2年間で12ヵ月以上働いた期間があること
- 離職後ハローワークで求職活動を行っているが再就職先が決まっていないこと
補償内容
自己都合退職 | 会社都合退職 | |
最短支給開始日 | 3ヵ月7日後 | 7日後 |
支給日数 | 90日~150日 | 90日~330日 |
最大支給額 (30歳~44歳の場合) | 約113万円 | 約249万円 |
新型コロナウイルスの緊急対応として2020年6月12日に成立した第2次補正予算において補償内容の拡充が図られました。
執筆時現在は厚生労働省など所轄官庁の公表待ちですが、審議された法案から現行の失業手当の受給期間が最大60日延長される見込みです。
日本経済新聞 失業手当、60日延長 コロナ失業者 加藤厚労相表明
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金
会社都合のため休業してはいるものの事業主に手当の支払余力がなかったり雇用調整助成金の申請を行えない等の理由で休業手当がもらえない労働者のた救済措置として第2次補正予算が成立した事により新設されました。
2020年7月10日より受付をスタートしました!
申請書などは厚生労働省のホームページから取得する事が出来ます。
受給要件
- 新型コロナウイルスに際して休業している中小企業の従業員であること
- 休業手当(給料)の支払がされていないこと
補償内容
- 2020年4月1日から9月30日の期間の休業日数が補償対象
- 休業前の6ヶ月のうち、3ヶ月に支給された賃金総額を90日で割った額(賃金日額)×80%(日額上限は11,000円)
厚生労働省 雇用調整助成金の拡充と新たな 個人給付制度の創設について
事業主が申請するもの
雇用調整助成金
経済上の理由で一時的に従業員を休業させる等の雇用調整を実施し休業手当を支払った事業主を助成する制度です。
新型コロナウイルスの感染拡大に際して全業種を対象として令和2年度の第2次補正予算により受給要件が緩和され緊急対応期間についても2020年9月30日まで延長されました。
受給要件
- 直近1ヵ月の売上が前年同月比5%以上減少していること
- 全従業員の中小企業で1/40、大企業で1/30を休業させていること
- 従業員に休業手当を支払っていること
補償内容
- 雇用保険の加入資格がない従業員への休業手当についても助成
- 支払った休業手当の中小企業で4/5、大企業で2/3を助成
- 解雇を行わず雇用継続の場合は、休業手当の中小企業で10/10、大企業で3/4を助成
- 助成額は日額15,000円を上限
- 支給限度日数は1年間で100日分(3年で150日分)
小学校休業等対応助成金
新型コロナウイルスへの対応として小学校等が休校になった事により保護者として子どもの世話をする必要があるため休業する事になった労働者へ法定の年次有給休暇とは別に有給の休暇を与えた事業主が申請する事で受けられる助成制度です。
また、ここで言う小学校等とは、小学校や幼稚園・保育所などに限られる点は注意しましょう。
ただし、特別支援学校に通う障害のある子どもについては、中学校や高等学校の休校に伴う有給休暇の取得についても補償範囲に含まれます。
受給要件
- 小学校等の休校により休業する必要の生じた従業員へ会社独自の有給休暇を与える
補償内容
- 有給休暇を取得した従業員へ支払った給与相当額[5]8,330円4月1日以降に取得した休暇は15,000円)が上限×休暇日数について助成金を支給する
※助成金の申請代行業務は社会保険労務士の独占業務ですので社会保険労務士以外の者が代行業務を行う場合は、社労士法に抵触する可能性があるので、本人が社会保険労務士なのか、もしくは提携する社会保険労務士の有無を確認するようにしましょう。
また、社会保険労務士であれば登録番号がありますのでこちらから検索する事で確認出来ます。
まとめ
- 新型コロナウイルスの世界的な流行は収束する状況にない
- 世界的に失業者が増加している
- イタリアなどでは、労働市場からドロップアウトする人も
- 新型コロナウイルスに起因する休業・退職についても既存の社会保障制度が使える
- 新型コロナウイルスの感染拡大を背景に補償範囲の拡大がされている
- 雇用の維持を図るために助成制度が新設されている
最後までお読み頂きありがとうございます。
当記事が読者方のお役に立てたら幸いです。
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