
フリーランスは思ってたより税金の負担が重たい…
何とかならないかな?

個人事業主が使える節税対策が知りたい!
なんてお考えではないですか?
個人事業主やフリーランスの場合は、事業収入から必要経費を差し引いて残った収入つまり生活費に対して税金が課せられます。税率は所得税と住民税を合わせると最大で55%にもなります。さらに売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務まで課せられるため節税対策は死活問題です。
この記事を読んでもらえると税金の仕組みや知識ゼロからでも始められる個人事業主・フリーランスの節税対策について理解してもらう事が出来ますよ!
個人事業主・フリーランスの税金の仕組み
- 所得=収入−必要経費-所得控除
- 納税額=所得×税率
所得税
個人事業主・フリーランスにとって最大の税金が所得税です。
と言うのも、所得に応じて税率が上がって行くいわゆる累進課税となっていて最小5%〜最大45%と他のどの税目よりも高税率となっているからです。
また、会社員とは違い毎月給料から天引きされる事はないので、年に1度その年分の収支を翌年の2月15日~3月15日までに[1]例えば2020年1月1日~12月31日分の確定申告期限は2021年2月15日~3月15日までです。確定申告をして所得を確定させ税額を計算し納付する事になります。
具体的な所得と税率の関係が分かる速算表を見てみましょう。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
例えば所得が400万円の場合の所得税額は「(400万円[2]所得×20%[3]所得に対応する税率)−42.75万円[4]控除額=37.25万円(所得税額)」となります。
所得が400万円であれば、税率は20%なので所得税額は80万円では?控除額とは何なのか?と思われるかもしれません。
もし、控除額を用いないで、所得400万円の所得税を計算しようとした場合の計算過程を見てみましょう。
195万円に対応する税率は5%なので、9.75万円。
135万円に対応する税率は10%なので、13.5万円。
70万円に対応する税率は20%なので、14万円。
各税額を合計すると37.25万円になります。
このように控除額を用いない場合は、煩雑な計算となってしまいますので、素直に速算表に当てはめて計算しましょう。
住民税
住民税についても所得税同様に確定申告をする事で所得を確定させる事で税額が計算されます。住民税については、税額計算を事業所の所在する市区町村が行い6月頃に納付書が送られて来ますので、その納付書を元に納税する事になります。
住民税の納付は年4回の分割払いとなっており、6月末日、8月末日、10月末日、翌年1月末日になります。
住民税は、誰もが等しく納税する均等割と所得に応じて納税する所得割からなっています。内訳の詳細について仙台市を例として一覧で見てみましょう。
個人市民税 | 個人県民税 | 合計 | |
---|---|---|---|
均等割 | 3,500円 | 2,700円 | 6,200円 |
所得割 | 8% | 2% | 10% |
ご覧の通り住民税には、個人市民税と個人県民税がありますが一括して市区町村へ納付する事で納税は完結します。
事業税
事業税は個人事業主・フリーランスなど事業を営む方特有の税金です。
事業税についても所得に対して課税されます。納付額は事業所の所在する都道府県から確定申告した年の8月頃に納付書が送られて来ますので、それを元に8月末と11月末の2回に分けて納付します。
税率については、業種毎に異なっていますので一覧で確認してみましょう。
区分 | 事業の種類 | 税率 |
---|---|---|
第一種事業 | 物品販売業,不動産貸付業,製造業,駐車場業,請負業,飲食店業,その他一般の営業 | 5% |
第二種事業 | 畜産業,水産業,薪炭製造業 | 4% |
第三種事業 | 医業,弁理士業,コンサルタント業,理容業,美容業,その他の自由業 | 5% |
第三種事業 | あんま,はり,きゅう等の業 | 3% |
また、事業税には、年額290万円の事業主控除がありますので、事業所得が290万円を超えた部分についての課税となります。
また、事業税は、所得税や住民税と違い納付額が全額必要経費になります。
消費税
- 納税額=収入と共に預かった消費税−支出と共に支払った消費税
これまでは、事業者自身が負担し納める税金について解説してきましたが、ここでは消費税の仕組みについて解説していきます。
消費税の納税義務は年間売上高が1,000万円以上の事業者に課せられます。
つまり、年間売上1,000万円未満の事業者には納税義務がないという事です。
では、消費税はどこに消えてしまうのか仕組みについて詳しく見ていきましょう。
消費税については、納税者[5]税金を納める者は事業者ですが、担税者[6]税金を負担する者は最終消費者という税金を負担する人と納税する人が異なっています。
例として缶ジュースが消費者の手元に届くまでの消費税の流れを見てみましょう。
上記は材料メーカーなどの製造工程を経て最終消費者が缶ジュースを消費するまでを表にしました。
青い列が購入を示しオレンジ色の列が収入を示します。そして、消費税は収入に含まれる消費税から支払に含まれる消費税を差引き納税額を計算しますので、材料メーカーの場合は、材料売上220円に含まれる消費税20円から材料製造費110円に含まれる消費税10円を差引き納税額10円となります。これを製造から流通の全ての工程で行い最終消費者が負担する消費税額は50円となります。
消費税は収入と支出に含まれる税額を差引きして算出しますが、例えば材料メーカーの年間売上が1,000万円未満で消費税の納税義務が免除される場合は、本来納税するはずであった納税額10円の消費税は納付する必要がないので、益税としてそのまま材料メーカーの事業資金として残ります。
このように消費税課税の流れを読み解くと商品の製造・流通過程で上積みされていくのでEU諸国では付加価値税として課税されています。
償却資産税
購入価格が単価10万円以上の資産について年に1度事業所の所在する市区町村に申告します。
償却資産税の申告は確定申告とは別の手続きになります。
対象となる資産とは、建物や自動車などのように個別に固定資産税や自動車税などが課税されない建設業で使われる重機や事業用の給排水設備や外構工事などです。
国民健康保険・国民年金
個人事業主・フリーランスは会社員と違って社会保険に加入する事が出来ないため国民健康保険と国民年金へ加入する事になります。
国民健康保険に加入する恩恵は、医療費の自己負担が3割になる、国民年金に加入する事で将来的に就業出来なくなった場合の備えが出来る点にあります。
こういった国民健康保険に加入する恩恵は社会保険とさほど大差ないものとなっていますが決定的に違うのは、国民健康保険には扶養の概念がないという事です。
それでは、夫婦と子1人という設定で国民健康保険と国民年金の負担額について試算してみましょう。国民健康保険の試算についてはこちらから事業主としての所得を国税庁 申告所得税標本調査結果より事業所得のある人の多くが所得1,000万円以下のため試算するにあたって事業主の所得を1,000万円としました。
年間国民健康保険料 | 年間国民年金 | |
夫婦子1人の場合 | 800,000 | 396,960 |
国民民健康保険料は所得上限が880万円となっており、その際の上限額が80万円です。
国民年金の対象者は20歳以上なので夫婦のみの負担額としました。
国民健康保険料と国民年金合わせると年間負担額は1,196,960円にもなります。
年間所得1,000万円で試算しましたが、所得に占める割合は11.96%にもなります。
個人事業主・フリーランスの節税
青色申告制度
事業者ならば、まず取り入れたい税制優遇制度で、納税者自らが税務署へ申請する事で選択できます。
個人事業主の申告方法には2通りあります。
- 白色申告・・・売上や仕入高を日毎にまとめて書くなどの簡易記帳でも可。
- 青色進行・・・複式簿記により取引ごとに記帳し財務諸表[7]損益報告書および貸借対照表を作成する。
帳簿類の保存義務がある事に違いはなく、白色申告では5年間、青色申告では7年間の保存が義務付けられています。そのため主に記帳方法の違いという事になりますが近年では、パソコンにて会計ソフトを用いた入力で複式簿記による記帳や財務諸表などの帳簿類の作成が容易になっています。
このため青色申告制度の方が記帳の手間などが増える事になりますが、期間での売上や利益の推移の把握が可能になったり、なによりも様々な特典が受けられるようになる事が青色申告を選択する意義になります。
主な青色申告の特典に青色申告特別控除・青色事業専従者給与・損失の繰越があります。
ここからは、その詳細について解説します。
青色申告特別控除
青色申告により確定申告する事で最大65万円の所得控除を受ける事が出来ます。
所得税率を5%、住民税率10%として節税額を試算してみましょう
- 650,000円(青色控除額)×5%(所得税率)=32,500円(所得税節税額)
- 650,000円(青色控除額)×10%(所得税率)=65,000円(住民税節税額)
青色申告するだけでもこんなにも節税効果が得られるのです。通常65万円もの経費を作り出そうとしても容易ではありませんので、青色申告特別控除が受けられるだけでも十分にメリットを享受出来ると言えますね。
青色事業専従者給与
事業主と生計を一にする配偶者や親族のうち年齢が15歳以上で、その事業に専ら従事する者に給与を支払った場合は、その全額が経費に計上出来ます。
例えば、住民税の非課税枠内の年間給与100万円以内に収まるように月の給与を8.3万円とした場合の節税額は、所得税率を5%として試算すると4.98万円になります。
このように一定の条件の下に配偶者や親族などへ支払った給与が全額経費に出来る青色事業専従者給与は事業を営む方は一度検討してみる事をおすすめします。
しかし、給与を払う事で、配偶者や親族を雇用する事になるので社会保険の加入対象になったり専ら従事する要件を満たすか否かという事でたびたび税務署から指摘される事例がある事には気を付けなければなりません。
税大ジャーナル 青色事業専従者給与「専ら従事」の要件についてに過去に納税者と税務当局とで争われた裁判事例が確認出来ますが、そのなかでも兼業する場合は、他の業務に240日以上従事していない事が青色事業に専ら従事していると解されている事が一定の判断基準に成り得ます。
損失の繰越控除
事業を営む際に、設備投資や大規模な修繕などで一過性の損失が計上されたり、災害等により事業に損害を被る、また事業の創業間もない段階ですと事業損失となる場合も考えられます。
そのような際に、事業損失を向こう3年間繰り越せる、また前年度の事業利益と相殺させて繰り戻し還付が受けられるの青色申告の繰越控除はリスクヘッジの観点からも有用と言えます。
少額減価償却資産の即時経費計上
制度を使うためには、青色申告を行っている必要があります。
少額減価償却資産とは、パソコンや調理器具等の備品や設備の購入単価が30万円未満の場合は、購入した年に全額経費計上出来るというものです。
通常、備品や設備等を経費に計上するためには、減価償却を要します。
減価償却とは、購入価格をその品目毎に定められた耐用年数で除して各年に計上する事です。例えばパソコンの場合は、国税庁 減価償却資産の耐用年数等に関する省令によると耐用年数は4年となっていますので、24万円のパソコンを買った場合は年あたり6万円の経費計上しか認められていません。
それが、青色申告をしている事業者であれば、30万円未満の購入価格であれば全額経費計上出来ますので、先ほどの例にあったパソコンの購入費24万円をその購入した年に全額経費計上出来ます。
つまり、減価償却費を先取りして利益圧縮効果を高める事が出来るという事ですね。
ただし、この制度を使って経費計上する限度額は年間300万円までとなっておりますので、無制限に使える訳では無い点には注意しましょう。
国税庁 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
自宅兼事務所
自宅を事務所として使用する場合にその家賃を家事部分と事業部分に按分する事で事業用の経費とする事が出来ます。
按分する際には家事と事業での使用割合を明確に区分しておく必要がありますので、床面積や使用時間などを記録するなど客観的に判断出来るように理論構築するようにしましょう。
また、生計を一にする配偶者や親族への家賃の支払は経費計上出来ないので注意してください。
自家用車を事業用として使用
自動車についても、自家用と事業用で使用した走行距離や用途を記録するなど明確に区分する事でガソリン代やコインパーキング代などについて事業用の経費とする事が出来ます。
また、家族名義の自動車を事業用に貸付ける事で賃借料や減価償却費などの維持費についても経費計上可能です。
ただし、家族名義の自家用車を貸付けた場合は、名義人に賃貸収入が発生するので、確定申告および税負担が生じる点は留意が必要です。
カーリース
自動車をリースで購入した場合は、ガソリン代などのランニングコストから車検費用や減価償却費などの維持管理費について全て経費計上可能です。
ただし、自家用で使う場合には、家事按分が必要になる点は上述した通りです。
短期前払費用
土地・建物の賃借やシステム保守費用、生命保険料など売上などと無関係に支払う必要のある経費については、1年以内の前払いをした場合に全額を支払をした年度の経費に計上できるというものです。
例えば、月額10万円で賃借する事務所家賃を短期前払費用とする場合
支払月 | 支払金額 | 短期前払費用として処理出来るか? |
12月に翌年1月~12月分を支払う | 120万円 | 12月に120万円全額を経費計上出来る |
11月に翌年1月~12月分を支払う | 120万円 | 11月に1年を超える期間の支払をする場合は短期前払費用にはならない |
このように前払いする期間は支払月から向こう1年以内となりますので注意してください。また、継続して処理する事が短期前払費用とする前提条件にもなっていますので、例えば、前年は利益が出ていたから短期前払費用として処理し今年は、月払いに戻すなど利益操作とみられるような処理は認められません。
継続して処理するとは、経験上3年以上は継続して処理するという意味です。
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